LOVEHATE~御曹司社長と黒い子作り婚~
その奥村さんの話を聞き終え、
私は疑問を口にする。
「その話が全て本当なら、綾知さんは私を憎んでないんだよね?」
「ああ」
「なら、子供を作る為の結婚だとか…。
私に他の人の子供を産めとか、意味が分からない」
今までの話の中で、それについての説明が一切なかった。
「俺、子供が出来ない体なんだ」
そう言われて、すぐに言葉が返せなかった。
子供が出来ないって…。
それって…。
「昔、ちょっと病気して。
それでそうなったんだけど。
この事は、うちの母親しか知らない。
あ、美帆子には、昔、少し話したか」
「男性不妊って、事?」
「そう。だから、千花にそうやって脅して妊娠させようとしたのは、俺が独断でした事。
結婚を迫ったのと同じように、千花が母親が不倫していると思っている事を利用して、千花を憎んでいるフリをして」
「フリ?本当にフリなの?」
憎いと、この人の私を見る目は、本当に憎んでいるように見えた。
フリじゃなかった。
「うん。全部話しただろ?
俺に、千花を憎む理由なんてない」
そうだけど。
「ねぇ、そこまでして、跡取りって必要なの?
他人の子供を産ませてそれを誤魔化して迄」
この人の住む世界は、普通ではないのかもしれないけど。
「必要だよ。
父親が凄く俺に早く子供を出来るのを望んでいる。
ほら?父親は俺の不妊知らないから。
けど、別に、俺自身は跡取りがどうとか、本当はどうでもいい。
ただ、俺は父親になりたかった」
その、父親になりたかったという言葉に、胸が締め付けられるように痛くなった。
この人のした事は許せないけど。
"ーー眞山がうちの太陽を可愛がるのは、彼は単純に子供が好きなんですよーー"
奥村さんにそう聞かされた時、その言葉が軽く聞こえたけど。
今は、胸に重くのしかかる。