LOVEHATE~御曹司社長と黒い子作り婚~
「結婚初夜はどうでした?」
滝沢さんにそう話しかけられたのは、エレベーターの中で。
先程、エレベーターに私達の他に居た男性社員が、8階で降りてから。
今日は、昨日のように私がこの人に話し掛ける事はなかった。
「どうって…」
思わず、感情的に怒鳴りそうになってしまう。
「俺が眞山社長に、無事に婚姻届が受理されたと電話したら、
今夜は辻山さんと二人でお祝いだと言っていたので」
お祝い、か…。
「眞山社長とはホテルに行ったくらいですよ。
私はすぐに自宅に帰りました」
昨日、自宅のマンションに帰ると、母親はまだ帰って来ていなくて。
帰って来たのは、夜更け。
自室のベッドでその音を聞いていて、母親に眞山社長と私の結婚の事で文句を言おうと思ったけど。
直接、母親に不倫している事を非難する勇気が無くて…。
私と眞山社長の結婚の話をしたら、
母親の不倫の事に触れないわけにはいかない。
私と母親は、その不倫を、
私が知っている事を母親は知っているのだけど。
そうやって、それをお互いに口に出した事はない。
それは、暗黙のルール。
眞山社長のお父さんの事は、
眞山のおじさんと昔から私は呼んでいた。
もう二十年近く会ってはいないけど、
私が小さい頃は、眞山社長のお父さんは、うちの家によく来ていて、
寝泊まりしていた。