LOVEHATE~御曹司社長と黒い子作り婚~
「でも、この子から綾知君と結婚する事になったと聞かされた時は、本当に驚きました」
その母親の言葉に、えっ、と思わずこの人の顔を見てしまう。
私が話さなくても、この人はこの結婚を知っているし。
それに、一度も、その話をこの人とした事なんてない。
いや、正確には昨日の夜に、ほんの少しそれっぽい会話はしたけど。
昨日も、遅くに帰宅した母親。
その彼女を待ち伏せるように、私は玄関に立った。
「明日、M駅の料亭らしいけど。
私とお母さん一緒に行くんでしょ?」
眞山社長の話では、うちの母親ももうそれを知っているらしい。
眞山社長が言ったのか、眞山社長のお父さんから聞いたのかは知らないけど。
「ええ。綾知君から聞いてる通り。
明日わりと早く出ないといけないから。
お母さん早くお風呂入って寝るから」
そう言って、ヒールを脱いで、
私の横を通り過ぎて行く。
「おめでとう、とか言ってくれないの?
娘が結婚したのに」
私は振り返り、その背にそう問い掛けた。
母親は足を止め、こちらを振り返ると。
「おめでとう。
綾知君は、とてもいい子だと思うわ」
そう微笑まれて、私は何が何だか分からなくて、混乱してしまう。
私と眞山社長との結婚は、
あなたの不倫をばらされないが為の、契約結婚な事をこの人だって知っているはずなのに。