LOVEHATE~御曹司社長と黒い子作り婚~

「でも、この子から綾知君と結婚する事になったと聞かされた時は、本当に驚きました」


その母親の言葉に、えっ、と思わずこの人の顔を見てしまう。


私が話さなくても、この人はこの結婚を知っているし。


それに、一度も、その話をこの人とした事なんてない。


いや、正確には昨日の夜に、ほんの少しそれっぽい会話はしたけど。



昨日も、遅くに帰宅した母親。


その彼女を待ち伏せるように、私は玄関に立った。



「明日、M駅の料亭らしいけど。
私とお母さん一緒に行くんでしょ?」


眞山社長の話では、うちの母親ももうそれを知っているらしい。


眞山社長が言ったのか、眞山社長のお父さんから聞いたのかは知らないけど。


「ええ。綾知君から聞いてる通り。
明日わりと早く出ないといけないから。
お母さん早くお風呂入って寝るから」


そう言って、ヒールを脱いで、
私の横を通り過ぎて行く。



「おめでとう、とか言ってくれないの?
娘が結婚したのに」


私は振り返り、その背にそう問い掛けた。



母親は足を止め、こちらを振り返ると。


「おめでとう。
綾知君は、とてもいい子だと思うわ」


そう微笑まれて、私は何が何だか分からなくて、混乱してしまう。


私と眞山社長との結婚は、
あなたの不倫をばらされないが為の、契約結婚な事をこの人だって知っているはずなのに。


< 38 / 148 >

この作品をシェア

pagetop