LOVEHATE~御曹司社長と黒い子作り婚~
「でも、これ程結婚を急ぐ事はないのに」
「ほら、俺も歳だから、子供の事とかを考えると、のんびりもしてられないから」
この中で一人、私と眞山社長との結婚が、契約的なものだと知らない、
眞山社長のお母さん。
その疑問は全うだけど、眞山社長のその返答も、説得力がある。
「綾知も、こうやってやっと身を固めてくれて、父親としてとても安心したのもそうだけど。
本当に、良かった」
そう話すのは、眞山社長のお父さん。
笑っているけど、私以上にこの人の方が、この場に居たくないのではないだろうか?
奥さんと不倫相手がこうやって同じ場所に居るなんて。
この人は、本当にこの結婚を良かったと思っているのだろうか。
この人の息子の嫁に望む家柄なんてものは私にないし、
愛人の娘だし。
「千花さんは、本当に辻山さんにそっくりだね」
眞山社長のお父さんにそう微笑まれて、なんだか複雑な気持ちになる。
私は昔、この人に何度も会った事があるはずなのに。
そうやって、初対面のような接し方だから。
そりゃあ、昔、何度も私の家に来ていた事を、奥さんの居る前で言えるわけないだろうけど。
それにしても、前にこの人に会ったのは、いつだっただろうか?
昔のあのパーティーよりも、もっと前だったと思う。
記憶は時間の流れとともに薄れるのか。
昔よく見たこの人も、こんな顔だったかな?と思ってしまう。
面影はあるような気はするけど、
あの頃から二十年近く歳を取り、眼鏡を掛けている。
少し、あの頃よりも痩せていて。
けど、子供だった私の方が、すっかり別人みたいに変わっただろうな?
この人はそんな私を見て、懐かしいとか思うのだろうか?