LOVEHATE~御曹司社長と黒い子作り婚~
「千花、スマホ忘れてた」


いつもは、受付の前を素通りの彼が、そう言ってこちらに来ると、私にそのスマホを渡してくれた。


「え、本当だ」


今朝、一人暮らしの晴君の家から出社した私。


こうやって、会社で話すだけで、
ちょっとドキドキとした。


それは晴君もそうなのか、少し照れ臭そう。


そんな私と晴君を、ニヤニヤと見ていた神山さんだけど、


「あ、あの人弁護士の滝沢さん」


そう言って、その滝沢(たきざわ)さんに視線が向いている。


その滝沢さんは、私は誰かは知らないけど、
一瞬、ビックリしてしまうくらいに整った顔をしていて。


エントランスで、スマホで誰かと連絡を取っている。




「あ、斗希さんだ」


晴君も滝沢さんを知っているのか、
もしかしたら、親しいのか。


その滝沢さんの下の名前だと思われる、とき、と呼んでいる。



「神山さん、晴君、あの人知ってるの?」


そう訊ねると、



「前にうちの顧問弁護士だった先生。
三年ぶりくらいに見たけど、相変わらず王子様みたい」


神山さんが言うように、滝沢さんはイケメンな上、育ちの良さそうな雰囲気があって。


まさに、王子様。


「俺、上司が斗希さんと仲良しだったから」


晴君がそう言い終わるくらいに、
その滝沢さんはスマホで話しながらこちらに歩いて来た。

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