LOVEHATE~御曹司社長と黒い子作り婚~
「お前ら、いい歳してそんなイジメみたいな事してんな」
食堂の入り口から、通る声でそう聞こえた。
それは、いつか一度話した事のある、川邊専務。
その言葉は私達に言っていたのか、こちらを見ている。
「べつに私達は…イジメなんて…」
先程まで私に怒っていたその女性は、
逃げるように私から離れて行き、同期の本間さんも、その彼女の後を追って行く。
「辻山、ちょっと話がある。
来い」
川邊専務にそう言われて、分かりました、と食器の載るトレイを持ち席を立ち上がる。
まだ、頼んだ日替わり定食は半分程残っていたけど。
この場から一刻も早く、離れたい。
川邊専務に促され、食堂近くの資料倉庫へと入る。
ただ、川邊専務と二人っきりというわけではなく、
その倉庫前で待っていた川邊専務の秘書の男性も。
三人、その倉庫に入ると。
「悪いな。
こんな所でお前と二人っきりになったら、何言われるか分かんねぇから」
川邊専務にそう言われ、ああ、それで三人なのか、と納得した。
その男性の秘書は、誰も入って来ないようにか、内側から扉の前に立った。
「篠宮がお前と別れた日にうちに来た、本当の所は。
こうなる事を懸念しての事だ」
その川邊専務の言葉は、説明が足りないのか、どういう事か、と考えてしまった。
「えっと…あの…。
どういう事でしょう?」
「あれだ。篠宮が人の多い所で告白したせいで、うちの会社の奴らはけっこうお前らが付き合っているのは知っていた。
で、今回、お前が篠宮を捨てて眞山社長に乗り換えた。
そうなると、社内のお前のイメージは最悪で。
篠宮はそうなったらお前が可哀想だと心配して、その相談で、あの夜俺の家に来た」
「そうだったんですね…」
晴君、あんな最悪な別れ方したのに、
そうやって私の事を心配してくれてたんだ。