LOVEHATE~御曹司社長と黒い子作り婚~
「篠宮が今お前を庇ったら、それは逆効果だから、あいつは何も言わねぇけど」
「はい…」
晴君が私を庇ったら、余計に晴君が健気に見えて可哀想と、周りはさらに私を非難するだろう。
「だから、その時は、俺にお前の事を庇ってやってくれって、あいつに言われた」
「それで、今日、川邊専務は私を助けてくれたんですか?」
「いや。今日のはたまたまだ。
ハッキリ言って、俺はお前を助ける義理はねぇし。
これからも、そうだ」
「…はい」
それは、そうだな。
この人にとって私は、ほぼ知らない人。
つい最近迄、可愛がっている後輩の彼女だっただけで。
「俺はもうこの件に関わりたかねぇけど。
ただ、言いたいのは、お前がこうやって自分のせいで嫌がらせされてる所を見たら、
篠宮もずっと気が重いだろ。
とにかく、さっさとこの状況をなんとかしろ」
「なんとかって…」
この状況をなんとか出来るならば、
とっくになんとかしている。
「一つしかねぇだろ?
この会社、辞めろって言ってんだ」
川邊専務のその言葉に、え、と口から出る。
なんで、私が辞めないと…と思うけど。
確かに、それが一番手っ取り早いのかもしれない。
「今の仕事が好きだとか、どうしても辞めたくない理由があるなら、俺も無理に言わねぇけど」
「いえ。検討してみます…」
べつに、今の仕事が好きだとか、この会社に強い拘りなんてない。
そうか。辞めてしまえば、楽になる。
幸い、今の私はお金には困らないような家に嫁いだ。
それがあるから、この人もそれを提案して来たのだろう。
なんなら、綾知さんの力で、他の系列の会社に再就職する事だって、出来るかもしれないから。
「話は、それだけだ」
そう言って、川邊専務とその秘書は倉庫から出て行った。