LOVEHATE~御曹司社長と黒い子作り婚~
今日も定時で終わると、逃げるように会社を出た。


今日は金曜日で、明日は土曜日で休みだから会社に行かなくていい。


その事が以前よりも嬉しいけど、
その反面、明日、あの家に1日中居ないといけないのか…、と憂鬱になる。


だから、会社を辞める事も躊躇ってしまう。


無職になったら、毎日ずっとあの家に居ないといけないから。


それにしても、週末は晴君の家にずっと行っていたから、
その流れで週末は予定なんて全然ないな。


晴君に、合鍵を返さないと。


もう捨ててしまおうか、と思っていたけど、ちゃんと返した方がいいだろう。

会社で渡すのは無理そうだから、郵送にでもしよう。


「千花」


目の前に晴君が立っていて、驚いてしまった。


ちょうど、晴君に鍵を返さないと、とか思っていたから。


「晴君?」


多分だけど、私を待っていたんだよね?


「上司に、体調悪いって嘘付いて早退しちゃった」


そう笑う、その晴君の顔。


なんだか久しぶりに見たな、と、
胸に込み上げて来るものがある。


「私に話があるの?」


「うん。一度、千花とはちゃんと話したいと思ったのもそうなんだけど。
ほら、俺の部屋に千花の物けっこうあって。
もう、それはまとめて袋に入れたんだけど、捨てるのもあれだし…。
今から取りに来てくれない?」


それに、どうしようか、と思ったけど。


この辺りの店とかに入って二人で話している所を、会社の人達に見られるのも嫌だし。


「分かった。
取りに行く。
ちょっとLINEだけさせて」


そう言って、私は鞄からスマホを取り出し、綾知さんにメッセージを送る。


高校の時の友人にバッタリ会い、少し話してから帰る、と。


そうやって、なんとなく本当の事は言えず、嘘を付いた。


始めに、随時行動を報告しろと綾知さんに言われていたので、今もそれは続けている。


最近の私の行動は、毎日会社と家との往復だけだったけど、それでも欠かさずしていた。


綾知さんからはすぐに返信があり、


『ごゆっくり』

そう書かれていた。


なんだか、全く疑ってもいないその文面だから。


ちょっと嘘を付いた事に、罪悪感を持った。

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