LOVEHATE~御曹司社長と黒い子作り婚~
その日も、綾知さんは帰って来るのが遅かった。


日付が変わりそうな時間に、
私はダイニングテーブルで綾知さんと向かい合う。


今夜は、綾知さんが親子丼を作ってくれた。


綾知さんは、お義母さんが作った、豚の角煮を食べている。


「今日、うちの母親大丈夫だった?」


そう訊かれ、何が?と首を傾げてしまう。


「ほら?今日仕事終わってから、高校の友達に会ったんだろ?」


そう言われ、あ、そうだった、と思い出した。


この人には、晴君に会った事を隠して、そうLINEしたんだった。



「あ、うん。
そこまで遅くなってないし。
ちょっと残業だったと言えば、お義母さんすぐに納得してくれた」


それは、本当だった。


実際、私の仕事は残業なんてないのだけど、
お義母さんはそれを知らないみたいだから。


そして、ついでに、明日も出勤になったとお義母さんには嘘を付いた。


明日は、美容室に行ったりネイルサロンに行ったり、色々しようと思う。


もう、ネットで予約も済ませた。


けど、そうやって私の変わった姿を見たら、仕事なのが嘘だとお義母さんにバレるかもしれないけど…。


仕事が早く終わり、帰りにちょっと寄ったとか言えばいいだろう。


明日はそうやって、自由に過ごせると思うと、ウキウキとして来た。


「千花、機嫌良いね?
今日、そんなに楽しかったの?」


「え、まぁ」


そうやって、誤魔化したけど。


ただ、綾知さんには明日のスケジュールは嘘を付かず、正直に後で話そう。


「綾知さん、私、会社辞めようかな?って思っている。
ほら?社長の妻がその会社の受付でいつまでも働いてるって…」


それが、おかしいのか?と言われると、よく分からないけど。


でも、正直に、会社で悪口を言われる事に耐えられなくて、とは言いにくい。


羞恥心なのだろうか。


「それは、千花の好きにしたらいいよ。
どのみち、妊娠したら仕事は辞めて貰うつもりだったから」



妊娠…。


その言葉で、なんだか気持ちが沈んだ。
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