LOVEHATE~御曹司社長と黒い子作り婚~
◇
「今日、生理が来たの」
綾知さんにそれを告げたのは、彼がベッドに入ってから。
今夜も彼は、私の隣で寝転んでいる。
「そう。
やはり一度では、上手く行かないか」
その言葉で、まだこんな事を続けるのだな、と絶望に似たような気持ちになる。
「ねぇ、綾知さんの子供じゃダメなの?」
その私の言葉に、こちらに向けられた目は、冷たくて。
「千花が、俺に触るな、って言っただろ?」
そう、鼻で笑われた。
「そうだけど…」
この人を強く拒んでから、綾知さんは私に一切触れなくなった。
私もそれを望んでいて、そうなったのだけど。
だけど、子供に関しては、この人の子供である方がいいに決まっている。
だって、他の人の子供なのに、この人の子供として育てるなんて。
やはり、子供が可哀想。
「俺は、自分の本当の子供はいらない。
もう二度と、言わせるな」
その声が、怒っているのが分かった。
今までで、一番。
「…ごめんなさい」
「今週も俺、土曜日仕事だから。
千花はまた気晴らしに、何処か出掛けて来たら。
千花の給料は小遣いとして、全部好きに使えばいいから」
そう言われ、土曜日は何をしようか、と思う。
先週の土曜日は、ネイルとヘアカットをした。
帰宅して、お義母さんにそれを咎められるのを覚悟していたけど、
私が帰宅したら、もう綾知さんも帰って来ていたので、何も言われなかった。
「綾知さん。土曜日、また早く帰って来てね。
お願い」
そうやって、私はこの人にすがってしまう。
今の辛い状況は、全てこの人のせいなのに。
私が頼れるのは、この人しかいない。
「ああ。なるべく早く帰るようにする」
綾知さんは、笑っていて。
先程、怒っていたのが嘘みたい。
こんな風に、綾知さんと私の結婚生活は、
互いにバランスを取りながら、続いていて。
ちょっとした事で崩れてしまいそうな程、私達の関係は、脆い。