LOVEHATE~御曹司社長と黒い子作り婚~
「健斗、こんな可愛い子の家庭教師してたんだ?
私には、地味な子だとか言ってたのに」
「え、そうだっけ?」
谷原先生は、その場をやり過ごすように笑っているけど。
なんとなく、奥さんの方は、私と谷原先生との関係を疑っているような気がした。
いや、私に対する牽制かもしれない。
私がこんな男に、好意を持っていたとでも思っているのだろうか?
なんだか不愉快で、なにもかも言ってやろうかと思ったけど。
それを思い留まったのは、その奥さんのお腹が大きかったから。
よく見ると、二人共結婚指輪をしている。
今さら昔の事を話して、この人達の家庭を壊したくない。
これから、子供も産まれるみたいだし。
「へぇ、彼は、千花の恩師なのか。
なら、何かワインの1本でもご馳走させて貰えませんか?」
綾知さんの言葉に、私や谷原夫妻もそちらに視線を向けた。
「あ、いえ。お気持ちだけで!
今、妻はアルコールは無理ですので」
谷原先生は、そう言う。
「じゃあ、こちら支払っておきます」
谷原先生達のテーブルの伝票を手に取り、綾知さんは笑みを浮かべている。
それは、いつも私が怖いと思う、この人の笑み。