LOVEHATE~御曹司社長と黒い子作り婚~
「いや。
そんな事して頂く必要ないですから!」
そう言って、谷原先生はその伝票を奪い返した。
「遠慮しなくてもいいのに。
大して稼いでいるようにも見えないから」
そう、笑う綾知さん。
つい先程迄、散々結婚指輪を見た後だから、
この人達がしている指輪が、どれ程のものか分かってしまった。
「あなた、ちょっと失礼じゃないですか?」
そう怒る谷原先生に、奥さんがそれを止めようと、この人の名を呼んでいる。
「すみません。いや、奥様が千花とあなたとの関係を勘繰ってらっしゃったけど。
ハッキリ言って、千花くらいのいい女が、この程度の男を相手にするわけないのに。
俺の妻の事を安く見られたみたいで、気分悪かったので。
だから、これでお互い様って事で」
そう言うと、綾知さんはまたいつもの笑みを浮かべている。
私もそうだけど、谷原先生達もそれに恐怖を感じたのか、言葉が出ない。
「不快にさせたお詫びに、やはり此処は支払っておきます」
綾知さんは席を立ち、再び谷原先生の手から伝票を取ると。
そのまま、レジの方へと歩いて行く。
私は、ちょっと待ってよ、と、慌ててその後を追った。