LOVEHATE~御曹司社長と黒い子作り婚~
◇
「あの男と、昔何があったの?」
そう訊かれたのは、店を出て少し歩いた時。
「…何も、ないよ」
言いたく、ない。
「千花は、あんな男がタイプなんだ?」
「なに言ってるの?そんなわけないでしょ?!」
綾知さんだって、そんな感じの事をさっき言ってたのに。
「そう?
わりと篠宮君と似てたよ?
顔じゃなくて、雰囲気とか」
「あんな男と晴君を一緒にしないで!!」
そう、感情的に怒鳴る私に対して、
綾知さんは足を止めた。
私も足を止め、息を吐き出すと、
観念したように口を開いた。
「昔、谷原先生に無理矢理されたの。
それで、私…」
それで、私は妊娠した。
「もしかして、それがあの噂の真相?
妊娠して、中絶したって」
「…中絶したわけじゃない。
流産したの」
稽留流産、そう説明された。
それは、病院で。
ずっと、妊娠しているかもしれない、と、気付いていたけど。
自分で調べる事も病院に行く事も、どちらも怖くて私はしなかった。
ある時から、下腹部に痛みがあったけど、それを無視していた。
そうしたら、授業中、強い痛みを感じて、不正出血を起こした。
私は慌てて、椅子から立ち上がったけど、
それでなのか痛みなのかで、目眩を起こして、倒れた。
次に、目が覚めた時は、病院だった。
私は、その時の事を話し出した。