LOVEHATE~御曹司社長と黒い子作り婚~




「あの男と、昔何があったの?」


そう訊かれたのは、店を出て少し歩いた時。


「…何も、ないよ」


言いたく、ない。


「千花は、あんな男がタイプなんだ?」


「なに言ってるの?そんなわけないでしょ?!」


綾知さんだって、そんな感じの事をさっき言ってたのに。


「そう?
わりと篠宮君と似てたよ?
顔じゃなくて、雰囲気とか」


「あんな男と晴君を一緒にしないで!!」


そう、感情的に怒鳴る私に対して、
綾知さんは足を止めた。


私も足を止め、息を吐き出すと、
観念したように口を開いた。



「昔、谷原先生に無理矢理されたの。
それで、私…」


それで、私は妊娠した。



「もしかして、それがあの噂の真相?
妊娠して、中絶したって」


「…中絶したわけじゃない。
流産したの」



稽留流産、そう説明された。


それは、病院で。


ずっと、妊娠しているかもしれない、と、気付いていたけど。


自分で調べる事も病院に行く事も、どちらも怖くて私はしなかった。


ある時から、下腹部に痛みがあったけど、それを無視していた。


そうしたら、授業中、強い痛みを感じて、不正出血を起こした。


私は慌てて、椅子から立ち上がったけど、
それでなのか痛みなのかで、目眩を起こして、倒れた。


次に、目が覚めた時は、病院だった。


私は、その時の事を話し出した。


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