LOVEHATE~御曹司社長と黒い子作り婚~
谷原先生の第一印象は、とても明るい人だった。
「M家庭教師派遣センターの紹介で来ました、谷原です」
それは、私が高等部の二年に進級してすぐだった。
その頃、私の成績が落ちていたから、母親が私に家庭教師をと、雇った。
高校時代、私はバレーボール部で、その部活動が忙しくて、塾に通うとなると帰りが遅くなるからと、
家庭教師を母親は選んだ。
当時の谷原先生は、有名な私立大学の四年生で、就職活動に忙しいけど、学校はあまり行かなくていいから、それで、このバイトをしていると言っていた。
谷原先生は、週に3回私に勉強を教えてくれて、とにかくよく喋って明るい人で、
私はわりとすぐにこの人に打ち解けた。
私は小学校の時からずっと女子校だからか、
男性と話すのも新鮮で、楽しかった。
それは、好みの漫画や音楽とかが女の子と話すのとは全然違って、面白かった。
けど、何度目かの家庭教師の時から、
「ねぇ、千花ちゃん。
今度、デートしようよ?」
そんな感じの事を、言われるようになった。
「私、部活が忙しいので、無理ですよ」
それを特に本気に受け取らず、私もそうやって軽く返していた。
「千花ちゃん可愛いし、付き合いたいなー」
そう言われた事もあった。
きっと、これはこの人にとって、
冗談なのだろう、とは思ったけど。
だけど、何度もそういう事を言われるうちに、
私も段々と嫌になって来て、
「もういい加減にして下さい!
何度言われても、私、そんなつもりないから」
そう怒鳴ると、今までずっと笑顔だった谷原先生の顔が、強張った。