敏腕パイロットのドSな溺愛~離婚するはずが、エリート副操縦士は最愛妻を甘く包んで離さない~
スタンバイからのアサイン、その理由はこの飛行機に乗務するはずだった副操縦士の体調不良だった。

もしかするとその時点で、佐合機長も自身の体に異変を覚えていたのかもしれない。彼の健康状態に気づかなかったのは、副操縦士として俺の大きな失態だった。

そして、福岡空港行きの往路では、離陸前の点検で航空計器に不備が見つかり、二時間遅れで羽田空港を出発した。

復路ではこの有り様だ。

佐合機長はもうまともに話もできない。

一刻も早く俺がなんとかしなければ。

……俺になんとかできるのだろうか。

訓練はしていても、胴体着陸の経験はない。

ちらっと後方を見やる。チーフパーサーの目に絶望の色が浮かんでいるのを察し、弱気になりかけた心が引き戻される。

俺が怯んでどうする。

俺がなんとかするんだ。

ふと、地上にいるちえりの顔が浮かんだ。

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