敏腕パイロットのドSな溺愛~離婚するはずが、エリート副操縦士は最愛妻を甘く包んで離さない~
『大丈夫だ。俺を信じろ』――初めて一緒に飛行機に乗ったとき、俺はちえりにそうささやいた。

俺が俺を信じなければ、あんなのはただの譫言になる。

俺ならできると自分を鼓舞した。

ちえりを泣かせるものか。裏切るものか。

余分な燃料はもうない。

管制官との交信、計器類の監視、すべてひとりで行う。

『Tokyo tower,JPAirlines 246,ask for landing clearance.』

管制塔に着陸の許可を求めた。

使用する滑走路ナンバー、風向き、風速を確認する。

『JPAirlines 246, Tokyo tower, cleared to land.』

管制官からゴーサインが出て、俺は最後の機内アナウンスを入れる。

「まもなく着陸します。衝撃があるかもしれませんが、全力を尽くします」

誰ひとり犠牲は出さない。

乗客乗員、二百三十八名の命が両肩に圧し掛かる。





< 118 / 126 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop