敏腕パイロットのドＳな溺愛～離婚するはずが、エリート副操縦士は最愛妻を甘く包んで離さない～

「そうなんですね。ご結婚はされていますか？」

「いや」

「彼女は？」

「いない」

愛想のない返答に、性格も変わっていないなと頬が緩む。

「ちえり、よかったね。大地さん、フリーだって」

杏は私に向かって親指をぐっと立てた。

「うん、うれしい」

満面の笑みを浮かべると、大地先輩が小さく噴き出す。

「おまえ、ほんと変わってない」

駆け引きできず、ばかがつくほど正直な性格は昔からだけれど、大地先輩といるとなんだか中学生に戻った感じになってしまうのだ。

「大地先輩もですよ」

「俺のどこがだよ？」

「じゃあ、せっかくだしあとはおふたりで」

杏はすっと席を立った。

「杏、帰るの？」

「うん。今日はパイロットの収穫もなさそうだし」

私の耳もとでささやき、杏はダイニングバーを出て行った。どうやら気を利かせてくれたようだ。