敏腕パイロットのドSな溺愛~離婚するはずが、エリート副操縦士は最愛妻を甘く包んで離さない~
離婚する気はない side:大地
ちえりとの離婚話をぶった切った電話は俺の母親からだった。

先日持ちかけられた見合いについてで、「もうほかの女性と結婚した」と告げると、ヒステリックにまくし立てられる。

『なに勝手な真似をしているの? 結婚はそんなに簡単なものじゃないのよ』

「そのセリフ、あなたにだけは言われたくない」

母は五十代になっても男好きのする容姿をフルに活用し、よりよい条件の男を見つけては乗り換え、再婚を繰り返している。今の夫は三……いや、四人目だっただろうか。

『とにかく一度その女性に会わせなさい。それからこの件は忠司(ただし)さんにも優菜(ゆうな)さんにも内密にして』

忠司さんとは母の現在の夫で、俺が勤めるJP航空の社長だ。俺が入社したのは九年前で、母が再婚したのは二年前。俺がパイロットになってから母は社長に近づいたのだ。ゆくゆくはJPAのすべてを息子である俺のものにするという目的を持ってのことだった。正直、その欲深さにはぞっとした。

優菜さん――新萩(にいはぎ)優菜は二歳下のCAで、名家の令嬢らしく、母と社長は俺と彼女を政略結婚させようとしている。母いわく、彼女は見合い話に乗り気だそうだ。

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