敏腕パイロットのドSな溺愛~離婚するはずが、エリート副操縦士は最愛妻を甘く包んで離さない~
話は二週間前に遡る。

小さな製紙会社の営業所で事務の仕事をしている私は、午後六時の退勤時間目前に、同期の杏(あん)に声をかけられた。

「ちえり、このあと暇? なにも予定がなければダイニングバーに行こうよ」

「ダイニングバー?」

「うん。高級ホテル最上階のスカイガーデン内にあるんだけど、開放的で雰囲気もよくて、ごはんもお酒もおいしいみたい」

「へえ、いいね」

私は二十七歳のOLにしては地味な生活をしていて、普段そういう場所には縁がないから、たまにはいいかもしれない。

「じゃあ決まりね。あっ、ちえりはそのままでもかわいいけど、できればメイクはしっかりしておいたほうがいいかも」

「高級ホテルだから?」

私のメイクでは薄すぎて、マナー的にNGなのだろうか。

「理由はお店に着いてから話すよ。とにかく盛れるだけ盛っとこ」

そういう杏はいつもよりもばっちりメイクだ。目もとは大粒のラメでキラキラしているし、数時間前まではポニーテールだったはずの明るめのロングヘアもいつの間にかおろし、波巻きになっている。

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