敏腕パイロットのドSな溺愛~離婚するはずが、エリート副操縦士は最愛妻を甘く包んで離さない~
どうしてそんなに気合いが入っているのかわからないままに、私は退勤後、杏の言う通りに少しだけメイクを濃くした。

自然なブラウンカラーのセミロングの髪は、簡単なアレンジをしてアップにする。

通勤用の服は甘めのニットにロング丈のタイトスカートで、たまたまきれいめなコーディネートだった。

「うん。いい。これならいける気がする」

なにがいけるの? と訊きたくなるつぶやきをする杏に連れられ、都内の高級ホテルに向かう。

地上三百メートルの高さにあるダイニングバーは、全面がガラス張りになっていて、三百六十度の夜景が楽しめた。

ゆったりとしたソファ席に向かい合って座ると、まずはスパークリングワインで乾杯する。

おなかが空いていたのですぐにフードメニューも注文した。でも杏は気もそぞろで周囲を見回している。

「どうしたの?」

尋ねると、杏はテーブル越しに顔を寄せてくる。

「実はここのダイニングバーで、地元の友だちがパイロットに声をかけられて交際に進展したんだって。それもふたりもよ。ここ、JP航空のパイロットがよく来るみたい」

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