敏腕パイロットのドSな溺愛~離婚するはずが、エリート副操縦士は最愛妻を甘く包んで離さない~
日帰りなので手荷物は祖父母へのおみやげくらいだ。

保安検査場を抜け、ラウンジには立ち寄らないまま優先搭乗する。時間に余裕があると引き返したくなるから、ぎりぎりの時間にやって来たのだ。

ファーストクラスの座席は、二席ずつ七組配置されていて、私たちは一番うしろの列だった。

大地さんは真ん中のパーティションをスライドさせてなくす。

席が広いから少し遠いけれど、これで手はつなげそうだ。

「ほら」

着席するとすぐに差し出された左手を、がしっと掴む。

「もう北海道に着くまで離しません。死なばもろともですよ」

「思考回路がやばいぞ」

恐怖心に駆られすぎて道連れ思考になっている私に、彼が突っ込んだ。

そこへCAさんが挨拶に来てくれ、思わず声を上げそうになる。

先日、羽田空港のロビーで私を見ていた人だったのだ。

自己紹介され、やっと名前を知る。新萩優菜さんというそうだ。

同性でも緊張してしまうほどの美人だ。

「お世話になります。飛行機が怖いので、ご迷惑をおかけするかもしれませんが……」

このあと自分がどうなるかわからないから伝えておいた。

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