敏腕パイロットのドSな溺愛~離婚するはずが、エリート副操縦士は最愛妻を甘く包んで離さない~
身構えた瞬間、飛行機が加速し、Gを体感する。轟音と共に機首が上がり、襲いかかる浮遊感に恐怖でどうにかなりそうだった。

「大丈夫だ。俺を信じろ」

我を失いそうになっていても、彼の声だけははっきりと私の耳に届いた。

彼の言葉が私をすくい上げてくれる。

すぐそばに彼がいるのだ。

彼なら信じられる。

不思議なくらい安心できた。


幸いにも、空の上でも大きな揺れなどはなかった。

一時間半飛行し、新千歳空港に到着する。

着陸も問題はなく、飛行機は緩やかに滑走路に接地した。

「生きてる……?」

「バリバリ生きてるよ」

微笑む大地さんに、やっと緊張が解ける。

「十五年ぶりくらいに、飛行機に乗れました……」

「偉いぞ。墜落するとか死ぬとか物騒なことを叫び出すんじゃないかと思ったが、静かなもんだったし」

どうやら私は現実逃避で心を地上に置いてきたみたいだったけれど、とにかくよかった。

新千歳空港から祖父母の家まではタクシーに乗る。

もうすぐふたりに会えるのだ。

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