敏腕パイロットのドSな溺愛~離婚するはずが、エリート副操縦士は最愛妻を甘く包んで離さない~
「大地さん、最期にお願いがあります」
彼が家を出るとき、玄関で切り出した。
「最期ってなんだよ。縁起悪ぃな」
フライト前のパイロットにそんな言葉をかける奴はおまえくらいだと呆れられてしまう。
「百回キスしてください」
ぎゅっと抱きついて背伸びした。
彼に熱烈なキスをしてもらえれば、もう思い残すことはない。たとえこのあとなにがあっても受け入れられるだろう。
「ハワイに着いてからな」
でも大地さんは素っ気なく答え、私を押し返してくる。
「えっ、じゃあ、せめて一回だけでも……」
「やだよ」
「一回もしてくれないんですかっ?」
そんな非情な仕打ちはありえるだろうか。
靴を履く彼に追いすがる。
「してやらない」
振り返りながらきっぱり言い放たれ、あまりの冷たさに泣いてしまいそうだった。
「ひどい……」
「せいぜい俺のことだけ考えて悶々としてろ。飛行機にビビる余裕なんかないくらいにな」
口の端を吊り上げた彼は、思い切りよく家を出て行く。
「ドS!」
私の罵りに、楽しそうな笑い声が聞こえた。
彼が家を出るとき、玄関で切り出した。
「最期ってなんだよ。縁起悪ぃな」
フライト前のパイロットにそんな言葉をかける奴はおまえくらいだと呆れられてしまう。
「百回キスしてください」
ぎゅっと抱きついて背伸びした。
彼に熱烈なキスをしてもらえれば、もう思い残すことはない。たとえこのあとなにがあっても受け入れられるだろう。
「ハワイに着いてからな」
でも大地さんは素っ気なく答え、私を押し返してくる。
「えっ、じゃあ、せめて一回だけでも……」
「やだよ」
「一回もしてくれないんですかっ?」
そんな非情な仕打ちはありえるだろうか。
靴を履く彼に追いすがる。
「してやらない」
振り返りながらきっぱり言い放たれ、あまりの冷たさに泣いてしまいそうだった。
「ひどい……」
「せいぜい俺のことだけ考えて悶々としてろ。飛行機にビビる余裕なんかないくらいにな」
口の端を吊り上げた彼は、思い切りよく家を出て行く。
「ドS!」
私の罵りに、楽しそうな笑い声が聞こえた。