この景色を、君と何度も見たかった。
【はる said】

復讐計画4日〜11日。 復讐まで後19日。

この1週間蒼とは全く話をしなかった。

しなかったと言うよりできなかったと言う方が正しい。

少しお互いが自分の時間を使って考えるべきだと思ったからあえて声もかけなかったし、相手の意見も聞こうと思わなかった。

でもこの1週間本当にたくさんのことがあった。

そして後に、私たちが起こす事件とつながる引き金を引いてしまった。

雛璃とたくさん話をした。

「ねぇねぇ、はる聞いて」

雛璃とこうして話すのは少ないし久しぶりな気がした。

やっぱり雛璃と話すのは楽しいなと思っていた。

だからたくさんいろんな話をしたいと思っていた。

「どうしたの?そう嬉しそうだね。」

ほんとに雛璃はうれしそうだった。

彼女が嬉しそうな姿を見るのは私にとっても幸せだった。

こんなにも人の幸せを見るのが嬉しくなったのは親友以来でとても不思議な気持ちだったが、

心地良かった。

「少し私のお父さんの話するね」

確かに私は雛璃のお父さんの話をあまり聞いたことがなかったので凄く興味を持っていた。

どんな仕事をしているのか、どういう人物なのか全く知らなかった。

雛璃とは高校に入ってからの友達なので、
雛璃のお父さんには会ったことがなかった。

でも雛璃のお父さんなのだから絶対にいい人なんだろうなぁと思っていた。

「なになに?聞かしてほしいなぁ楽しみ!」

そう聞いた私にすごい幸せそうな顔をしながら雛璃は言った。

「少し自慢みたいになるけどいい?」

私はすぐにこう、返した

「雛璃のお父さんなんだもん。

何でも聞かせて欲しいな。

自慢を出来るようなお父さん、素敵だね」

「早く教えてよ、何でもいいから!」

すごく雛璃は嬉しそうな顔をした。

そしていろいろな話を私にしてくれた。

「私のお父さん、

学校の先生をしているんだけど、

すごく優しいんだよ。

なんか前言ってたんだけど、

他クラスのいじめられている女の子を助けたみたい。

他のクラスの担任の先生はT先生と言うみたいなんだけど、生徒のいじめを見て見ぬふりしてたんだって。

だけどうちのお父さんが見てられないと思って、いじめられていた女の子のことを助けたみたい!

それでね、、いじめはなくなったんだって!

そういうところも自慢のお父さんなの!

あとね、すごくお母さんのこと大好きで、帰ってきたらいつもお母さんに1番にただいまって言っててすごい仲がいいんだよ。

とにかく私は、お父さんのことがすごく尊敬できて世界一大好きなんだ。」

そう言って雛璃はとても幸せそうな顔をした。

すごくいいお父さんなんだなぁと思った。

けれど、何故か私の中で引っかかる何かがあった。

けど、気にしなかった。

「とてもいいお父さんなんだね。

雛璃のお父さんがうらやましいよ。

こんな優しいお父さんだから雛璃もこんなに優しいんだね。

こんな先生が担任だったらとてもみんな幸せだろうなぁ。」

私がそう言うと雛璃はとても嬉しそうな顔した。

そして、世界で1番幸せそうな微笑みを浮かべて

「うん!」

と元気よくうなずいた。

雛璃が私に何か自慢する事は珍しかったのですごく嬉しかった。

そして私は、

「まだ自慢話聞かせてよ〜〜!」

と聞いた。そうすると嬉しそうに困りながら、雛璃はこう言った

「えぇーーもうないなぁ。」

そう言った後にまた一言、

「そんなに興味津々に聞いてくれて嬉しかった。

やっぱりはる大好き〜〜。」

そう言ってくれた。

すごく嬉しかった。

私はいつものように雛璃にこう伝えた。

「私も大好きだよ。ずっとこういう話をして一緒に盛り上がっていたいなぁ。」

そう言うと雛璃はこう言った

「これからもずっと一緒に決まってるじゃんねー。」

雛璃が素直にこういうことを私に伝えてくれることが珍しいのですごく驚いた。

いつも私がふざけて大好き〜って言いながら飛びついて行く。

すると雛璃は

『いつもはるは私にそんなこと言って抱きついてくるよね〜』

と困りながら抱きしめ返してくれる。

そういうツンデレなところも好きだった。

だからいつもよりデレな雛璃にびっくりした私は、とっさに

「今日はツンデレをやめたの?」

と聞いた。

そうすると少し照れたように

「そういう日もあるし。」

といつもの冷たさで返してきた。

いつもの冷たさに戻ったとしても雛璃の事は大好きだ。

またその日と違う日に、雛璃と話をした。

雛璃からのいきなりのカミングアウトにすごく驚いた。

「実は私、蒼君のことが好きかもしれない。」

複雑な気持ちになった。

どうしていいのかわからなかった。

応援したいけど何故か嫌だと思ってしまった。

どうしよう…。

なぜか心が重くなった。何とも言えない。

なんでこう思うのだろう。

全くわからない。

雛璃には幸せになってほしいと本当に思う。

だけれど、心が追いついてこない。

「そうなんだ。」

やっとの思いで口から出たのはこれだけだった。

これ以上の事は何も言えなかった。

雛璃がまた何かを話そうとするが聞きたくなかった。

何を言われるのか少し想像ができた。


それを面と向かって言われてしまったら、私は受け入れることしかできないから聞きたくなかった。


そんな私の気持ちも知らずに、雛璃はまた話し始める。

「蒼くんのLINEが欲しい。」

……やっぱり。

いやだとは言えない。

でも本当の気持ちを素直に言うと渡したくなかった。

それが何でかわからなかった。

「今月城くんと喧嘩してるからもう少し後でもいい?」

と言った。
雛璃は少し不満げな顔をした。

「喧嘩しててもLINEぐらいもらえるくない?」

と私に言ってきた。

少しむかついた。

心に余裕がない証拠なんだろうか。

「それが文句あるなら自分でもらってくればいいんじゃないの?」

と少し冷たく返した私に雛璃は

「応援してくれないんだ。」

とすごいがっかりした顔で言ってきた。

その日私たちは口を聞く事はなかった。

別にそれでもよかった。

私と月城くんの関係に雛璃が入ることが私にとって許せなかった。

なんで許せないんだろう…。

何度考えてもわからなかった。

でも雛璃と月城君が笑っているところを想像すると胸が痛かった。

何だろうかこの気持ちは。

仲間が取られると私は思っているのだろうか。

ほんとにそれだけだろうか。

私はなぜか月城君に会いたくなった。

なぜ会いたくなったのかもわからない。
けれど頭の中が彼でいっぱいになった。

早く謝りたいなと思った。

そしてまた計画の続きを始めよう。

次の日になっても少し雛璃とは気まずかった。

けれど、私は後悔をしないように

「雛璃、ごめんね。」

と謝ることができた。雛璃も

「私の方こそ冷たい言い方してごめんね。」

と言ってくれた。

これで私たちの短い喧嘩は終わった。

喧嘩しててもすぐに仲直りできるこの関係が私にとってすごく大切なものだった。

やっぱり雛璃は優しいなと思った。

蒼と話せないまま1週間が経った。

窓の存在がとても大切なことを気づいた。

1週間復讐の事から離れて過ごしたけれど、復讐を辞めると言う選択肢はやっぱりなかった。

また蒼と復讐の話を早くしたいと思った。

だから明日学校できたら謝ろう。

いや今からLINEをしようと思った。

「月城くん、ごめんね。明日話さない?」

その後、続けてこう送った。

「明日久しぶりに一緒に帰ろう。」

と聞いた。

すぐに返事返ってきた

「わかった。こちらこそごめん。」

「一緒に帰ろう。話したいこともたくさんあるし。」

と送られてきた後に、

「また明日。」

と送られてきた。久しぶりだった。

私はすごく嬉しかった。

「また明日。」

あの日言えなかった言葉を今日は言えた。

嬉しかった。

いつも憂鬱な学校が少し楽しみになった。
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