オフィスラブは突然に〜鬼部長は溺愛中〜
「さあ帰るか」

「うん。帰ったら私が先にお風呂入っていい?」

「どうぞ。俺まだ仕事残ってる」

「じゃあ、何で会社まで来たの?」

「う〜ん。なんとなく?」

「なにそれ」

 仲良く並んで歩く姿は、間違いなくカップルに見えるだろう。楓は、柚が落ち込んでいる気がして早めに仕事を切り上げたのだ。ふたりの間には誰にも邪魔できない絆がある。

 二人の住むマンションは柚の会社から徒歩10分程だ。楓の職場は電車で30分程。

 就職先が決まった時に、楓の提案で柚の会社に近い所に引っ越しをした。自分は男だから何とでもなるが、もし柚が残業で終電に間に合わなかったら困ると譲らなかった。実際、広告代理店の割には残業は少ないが、期限がある仕事も多いため、終電を逃す時間になった事も何度かあり、楓の判断は正しかった。

 楓の仕事も時間が不規則で、こんなに早いことは滅多にないし、よく会社に泊まり込んでいる。きっと、今日も無理して切り上げてくれたのだろう。



 

 
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