ネコの涙
『ネコちゃん。もっと上手くやらなきゃダメだよ。アハハ。』

彼女は、私の失敗をずっと見ていたのです。

『ネコちゃん、独り?』

『ニャ。』

『アハハ。応えたの?すごいすごい。』

素敵な笑顔。
私はおもわず見とれていました。

『そんなに見つめないでよぉ。私はヒトミ。ネコちゃんは・・・』

彼女の細い指が、私の汚れたブルーの首輪を探りました。

『名前は書いてないんだ・・・。じゃあねぇ・・・。カズにしよ!今から、ネコちゃんの名前は、「カズ」だからね。』

(とても人間っぽい名で・・・)

そんなことはどうでも良く、私はこの夢の様な展開に、鼓動が高鳴りました。

(私は「カズ」。ヒトミが新しいご主人様。)

こうして、二つ目の名前がついたのでした。

『よろしくね。カズ。』

そう言って、ヒトミは、汚れた私を抱きしめてくれました。

(ヒトミ・・・服が汚れちゃ・・・)

『くっさ~い!』

(そんなにハッキリいわなくてもぉ!)

『あれ?カズ泣いてるの?そんなに嬉しいのかな。ハハハ。変なコ。さて、帰ろ!』

ネコにも嬉し涙はあります。人は気付いていないだけで・・・。

ヒトミと私は、横に並んで歩いて行きました。
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