たぶんもう愛せない
うっうっうっうっ
涙がとまならない。

お義父さまからの着信を音が鳴る前に出る。

「奈緒さん?どうしたの?」

「ひっく、今は、うっどこですかっ」
横隔膜が痙攣して、うまく言葉がでない。

「そろそろ東名に入るところだよ」

「一生のお願いです、熱海に行かないで」

「一生のお願いをそんなことに使っちゃいけないよ、わかった今から戻るよ。戻ったら説明してくれるね?」

「はい、あの弥生さんから何か渡されましたか?」

「ああ、眠気よけだと言って小さなステンレスボトルにコーヒーを入れて持たせてくれたよ」

それだ!

「それはもう飲みましたか?」

「いや、口をつけてない」

一気に体の力が抜けた。

「それは絶対に飲まないでください。あと、家ではなくて家の近くにあるスーパーの駐車場で待ってます」

「わかった、じゃあ今から向うから。奈緒さん、落ち着いて」

お義父さまと連絡がついたことに安堵して腰が抜けそうになった。

よかった、とりあえずスーパーに向かうため、ゆっくりと歩き始めた。
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