たぶんもう愛せない
「何よ、何が可笑しいのよ」

「こんな男の子供を産むわけないでしょ」

流石にこの言葉で海の表情が青く変わっていく。

「前に、貧血で鉄剤の処方を受けているって言ったことがあるでしょ?あれ、うそだから。
本当はピルの処方をうけていたの」
「だから、よほどのことがなければ妊娠なんてしないのよ」

「奈緒・・・」

間抜け顔とはこんな表情を言うんだろう。海は呆けた顔で私をみつめている。
その反対に弥生は憎悪の瞳を私に向けていた。



ピンポーン

来客を知らせるチャイムがなり、私が玄関に行くとお義父様に呼ばれたという弁護士が立っていた。

リビングに戻ると
「奈緒さんも海智と二人で話すことがあるんじゃないのか?わたしの方は、弁護士の先生にきてもらったから今後の話をしなくちゃいけないんだ」

「はい、わたしも海と二人で話をしたいので向こうの家にもどります」

そう言って歩き出すと、海は黙って後ろについて来たが、リビングに入り、お互いいつものソファに座った時、海がつぶやいた。



「奈緒、きみは一体だれなんだ?」

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