たぶんもう愛せない
<見届ける者>
「永遠?」

海からお腹の子の名前を聞いたのかしら?

「あの・・・永遠について何の話ですか?」

「海智が居なくなった後の永遠くんの事です」

足の力が抜けてその場に崩れ落ちそうになった所を神山さんが支えてくれたおかけでとどまることができた。

「少し、長くなります。中に入れていただいてもよろしいですか?」


神山さんも回帰しているのなら永遠のことを聞ける。私の両親に預けられた永遠のその後。

「どうぞ」

神山さんは私を支えながらリビングに向かった。

永遠の話を聞けると思うと不安と期待でいっぱいになり体が少し震えているのがわかる。
「ごめんなさい、冷蔵庫にペットボトルの水が入っていますので二本ほど持ってきていただいていいですか?今、動けそうもないので」

「構いません、失礼します」

神山さんがミネラルウォーターを取りに行っている間、ゆっくりと深呼吸をしてからお腹を優しくさすった。

手に2本のミネラルウォーターを持って戻ってきた神山さんは2本ともテーブルの上に置いたので1本を神山さんの前に置いた。


「それで?」

神山さんは両手を膝に置いて深く頭を下げた。
一体それが何に対しての行動なのかわからなくてただ神山さんの後頭部を見つめていた。

ゆっくり顔を上げると話を始めた。

「わたしのせいでもあったんです」

全く、話が読めない。
もともと、漠然とこのひとを好きになれずにいたが、その理由もわかるだろうか?


「まずはわたしが奥様に片想いをしていたのが発端なのかもしれないです」

「え?」

「入社したての頃、奥様を偶然見かけていわゆる一目惚れをしました。ただ、それはわたしの一方的な想いですからずっと心の底にしまってました」

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