たぶんもう愛せない
永遠くんに海智が消えたダムに行きたいと言われて二人で行きました。

わたしは永遠くんを可哀想な子供という想いから何をしても目を瞑ってきました。でもそれが大きな間違いだった。
奥様の愛情を、祖父である社長の想いを永遠くんの為に会社を残したいという海智の想いを伝えるべきだった。

二人で車でダムに向かいました。

車の中で永遠くんがボソリボソリと話をはじめたんです。

「母さんは綺麗で優しい人だったんだね」

ええそうです。

「母さんは父さんと結婚しなければ幸せになれたのかな」

そうかもしれませんね、でもそうなると永遠くんはこの世に存在しなかったです。

「俺が生まれてきた理由はなんだろう」

少なくとも、お母さんもお父さんも永遠くんを愛してました。そして、祖父である社長も永遠くんが可愛いからこそ、会社を永遠くんに残すようにしたんだと思います。

「それなのに俺は会社を危険に晒してしまうところだったよね」

今からでも軌道修正しましょう。

「そんなの無理だって神山さんがよく知ってるじゃないか。今まで神山さんの言うことを聞かなくてごめん」

わたしも永遠くんをきちんと導けなくて申し訳なかったと思うよ。


途中コンビニに寄ると、花束が売られていたので一つ購入しました。
海智に手向けるつもりで。


「永遠は苦しんだのね」

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