たぶんもう愛せない
広いリビングには長ソファが3台、大型テレビ向かって円を描くような形に設置され、パーティションで仕切られたところにはカウンターがありショットグラスからワイングラスまで置かれていてミニサイズのウィスキーのボトルが何種類か並べられバケツ型のワインクーラーにはロゼのワインが冷やされていた。

「こんなに素敵なホテルに泊まったのは初めて、色々みてみていい?」

「どうぞ、好きなだけ楽しんで。俺は先にシャワーを浴びてくるよ」

「うん、そうして」

前回と同じ部屋だ、バッグの中から超小型カメラを取り出すとカウンターに飾ってある花の中に取り付ける。
前回、海がワインをここで注いでからリビングに持ってきた。何か細工をするならここになるはずだ。
いそいでWi-Fiを繋げるとスマホに録画できるように設定をして、スマホを防水ケースに入れさらに化粧ポーチに入れたところで海がシャワールームから出てきた。

「私もシャワーに入ってくるね」

「ああ」

化粧ポーチを持ってシャワールームに入るとシャンプーなどのアメニティが設置してある棚にスマホを立てかけカメラを起動させてから体を洗っていく。

しばらくは無人のカウンターを映し出していた画面に海の姿が現れ、ワイングラスを二つ並べワインの栓を抜き始めた。

これだけみてると気の利くイケメン旦那だ。

スマートにコルクが抜けるとポケットから小さなチャック付き袋を取り出すとワイングラスの一つに中の白い粉を入れた。
白い粉が入っている方にほんの少しのワインを入れるとグラスを揺らしはじめる。

薬を溶かしているんだ、あれが睡眠薬か。やっぱり、初夜は弥生と過ごしていたんだ。
きっとこれからも何度も睡眠薬を飲まされるだろう、それで前回は不眠と突如くる睡魔に悩まされて正しい判断ができなくなってあの事故が起きたんだ。

この先、海から手渡されるものは気をつけないといけない。
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