たぶんもう愛せない
海が帰ってくるまで時間があったから、お義父さんからいただいたものを開けてみる。
高級チョコレートで、蓋を開けると一口サイズのチョコが宝石のように並んでいて、さらに二段の引き出しがありそこにも綺麗なチョコが並んでいた。

「美味しそう」

一つ選んで口に入れると甘さの中にほろ苦さのある少し大人な味が口に広がる。

箱も宝石箱のようで、チョコレートを楽しんだ後は小物入れにしよう。
しかも、これって2万はするやつよね。
海に食べさせる必要はないよね、私が少しづつ楽しんじゃおう。

箱をいそいそとベッドルームに持っていくと私用のサイドテーブルの上に置いて、チョコを眺めていると思わず「ふふふ」と声がでた。

「何か楽しいことでもあった?」

声をかけられ慌てて振り向くとドアのところに海が立っていた。

「ごめんなさい、今すぐ食事の用意をするね」

「慌てなくていいよ、それよりどうしたの?」

「お義父さまから誕生日のプレゼントをいただいたの」

海は「へぇ〜」と言ってチョコを覗き込む。

「奈緒ってチョコが好きなんだ」

「好きというか、ここのチョコって一粒でも高いから誰かから貰わないと食べられなかったし、こんなすごいの初めて見たから嬉しくて」

ふ〜んと言うとチョコを一つつまむと止めるまもなく口に放り込んだ。
「あっ、私のなのに」

海はニヤっと笑うと、唇が重なると口の中にふわっとブランデーの香りが広がると、チョコが消えるまで唇が離れなかった。

「もう、ご飯の準備するから着替えてきてね」

「わかった」と言う声が楽しそうだった。


前回はお義父さまからプレゼントをもらうことはなかった。
お義父さまとの関係性も変わって来ている。
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