たぶんもう愛せない
朝、海の腕の中で目が覚め昨夜の事が断片的に思い出して来た。

久しぶりに楽しいお酒で飲み過ぎて足に力が入らなくなり海に横抱きでタクシーに乗り込み家に着いた時に海にまた抱きかかえられて家に入った。
更には服を脱ぎ散らかしながらベッドルームに入りそのままダイブした。

「最悪」

そっとベッドから出て部屋着を着る。
脱ぎ捨てたはずの服はハンガーにかけて壁にぶら下がっている。

海がやってくれたんだ。

まだベッドで眠っている海を残して顔を洗って簡単に髪をまとめるとキッチンに向かう。
その途中リビングのソファに昨日持っていたバッグが置いてある。
バッグの中から小さなケースを取り出すとピアスを取り出して耳につけてキッチンに戻り朝食の支度を始めた。
食器棚に耳を映して微笑んでみる。

「気づくかな」

サラダに温めたバターロール、野菜スープにオムレツをテーブルに並べていると「おはよう」と声が掛かった。

「おはよう、昨日はありがとう、そして迷惑かけてしまってごめんなさい」

「迷惑なんてかかってないよ、むしろ奈緒のかわいいところが見れて嬉しかった」

海は私の耳を触ると「似合ってる」と耳元で囁いて椅子に座った。

海を送り出してから、いつもの作業を済ませるとしばらくは自分の時間だ。

昨夜の醜態はどんな感じだったろう、恥ずかしいけどちょっと確認してみよう。

リビングのカメラはSDカードに分割して録画するタイプなので、カードを取り外すとベッドルームにむかいベッドの上でパソコンを起動して動画のサムネをざっと見ていく。

その中に気になるものが映っていた。

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