たぶんもう愛せない
<2回目>
「よかったら二人で庭を歩いてくるといいですよ」

経理部長がニコニコと私と目の前の男、新宮電機株式会社の専務である新宮海智(しんぐう かいち)を交互に見て言った。


どういうこと?
お見合いの日?

この場面を覚えている。男に騙されて捨てられた翌日に部長に食事会に参加するように言われ、行ってみると専務とのお見合いだった。
あの頃は多少の疑問はあったけど、男に捨てられた悔しさと玉の輿に乗れるということに舞い上がってしまっていた。しかも専務はイケメンの独身で社内の女子の憧れの的だったから。

でも、今思えば違和感だらけだった。
わざわざお見合いなんてしなくてもいくらでも相手に困らないはずだが、必要だったのは人畜無害で子供さえ出来れば簡単に捨てられるような女だったのだから。
今だって夜には社長にバレないようにあの義母(おんな)を抱いているんだろう。

「山口さん行こうか」

そう言って専務は優しそうな笑顔で私の手を取った。


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