たぶんもう愛せない
「今日は餃子か、美味そうだ」

「美味しいわよ、誰が作ったと思ってるの?」

海は笑いながら抱きしめると「奈緒」と言ってキスをする。

身体を許してから距離が凄く近くなっている。
一応、夫婦なんだから仕方がないか。

「タレにもニンニクが入っているのか、旨いな」

少しくらい躊躇するかと思ったのにむしろ嬉しそうに完食した。

食器を軽く水洗いすると海が食洗機に並べていく。

「二人で片付けると早いね、これからもできるだけ手伝うようにするよ」

「別に、海は仕事で疲れてるんだから、気にしないで」

「そうじゃない、俺が奈緒との時間を増やしたいんだ」

眠らせる気満々のくせに、よく言う。

シャワーから出るとちょうど海がワイングラスに赤ワインを注いでいるところだった。

「ふふふワイン」

海はワイングラスを私に渡すと軽くグラスを合わせると、チリンと鳴った。

グラスのふちに唇をつけてから
「そうだ、カマンベールを買ってあるの」

「じゃあ持ってくるよ、飲んでいていいよ」
海がキッチンに入るとソファの下に隠しておいたスポンジを入れたタッパーにワインを入れ、蓋をしてまたソファの下に隠した。

海がカッティングボードにカマンベールを乗せて戻ってくるタイミングでボトルからグラスにワインを注いだ。

「美味しいワインだね、飲みすぎちゃいそう」

「家だから、飲みすぎたって大丈夫だよ」

うふふと笑ってグラスのワインを飲み干した。

ぼんやりとしてから目を瞑って、少し上半身を揺らしてみる。
「奈緒、大丈夫?」

「うん」

「眠いならベッドに行こうか」

「うん」

そのままソファにもたれて目を瞑ると海は私を抱き上げた。
ベッドに横たえられるとおでこに柔らかいものの感触があり「おやすみ」という声が聞こえた。


ドアが閉まる音がしてさらにドアの開閉の音がした。
今出て行ったのかもしれない。そっと、再度テーブルの引き出しからタブレットを取り出すと弥生の部屋につけているカメラに接続した。
< 44 / 126 >

この作品をシェア

pagetop