たぶんもう愛せない
夕食を届ける時にお義父さまと言葉を交わすことが多くなっていった。
会社での表情が見えないやり手社長のイメージはなく物腰が柔らかくさりげなく気遣ってくれて好感がもてる。

「昼はいつも一人で食べるのか?」

「はい、夕食の残りをアレンジしたりして食べてます」

「それなら今度お昼を一緒にどうだい?」

「いいんですか?嬉しいです」

「じゃあ、早速明日はどうだろう?」

「はい」

リビングでドラマを見ていた弥生がダイニングにきた。
普段は、私が帰るまでソファにもたれているが、話が聞こえたのかもしれない。

「なんだか楽しそうね」

「いつも美味しい夕食を用意してくれるからランチに誘ったんだよ」

「別にタダで作ってるわけじゃないでしょ」

「それなら君も一緒に来るかい?奈緒さんはい?」

「はい」

「別にランチがしたいわけじゃないわ、私は結構よ」

「そうか、それなら仕方がない。じゃあ奈緒さん明日のことをあとで連絡するよ」

「楽しみにしてます」

弥生は面白くなさそうにご飯を食べ始めた。


特に言う必要も無いから海にはお義父様とのランチの話はしなかった。
明日、話せばいい。

海は弥生のベッドルームで拾ったピアスをなんて言って返してくれるだろう。
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