たぶんもう愛せない
急いで家事を済ませると身支度をして家を出た。車を寄越してくれると言うのを断り会社の近くで待つことにした。
少しすると黒の高級車が目の前に停車してスモークのかかった窓が降りていくとお義父様の顔が見えた。
「待ったかい?さぁ乗って」


「もう慣れたかい?」

「はい、お義父様にも良くしていただいているし、海も色々と気を使ってくれるから楽しく過ごしてます」

「そう、それならよかった。家事をやらせるとか失礼な事をさせてしまって気になっていたんだ」

「暇を持て余すよりもいいですし、おかげでお小遣いまで頂いているので感謝してます」

「そうか、海智が急に結婚するとか言い出して驚いたが奈緒さんが来てくれて良かった」

「私もお義父様でよかったです。正直に言うと会社では近寄り難かったので少し怖かったんですけど、取り越し苦労だったみたいです」

お義父さまは「誤解がとけてよかった」と笑った。


他愛もない話をしていると車が停車し「到着しました」と運転手さんが言ってから外にでると、後部座席のドアが空いた。

「あの、ありがとうございます」

「1時間後に来てくれればいい」
お義父さまが運転手にそう伝えると畏まりましたと言って運転席に戻っていった。

「大将が待っているから行こうか」
そう言われて入ったのは回らない寿司屋だった。

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