たぶんもう愛せない
大トロが口の中で蕩けてしまう。

「美味しい」

一つ食べ終わると、次にほっき貝の握りが目の前に置かれる。
それを手に取ると一口で口中に収めると、コリコリとした食感を味わう。

「ご飯のふっくらと貝の歯応えがたまらい」

玉子焼きが置かれると

「ほんのり甘くてそれでいて出汁が鼻から抜けて幸せ」

何が出ても次々と言葉が止まらず夢見ごごちで食べていくと、大将とお義父さまが嬉しそうに見ていた。

上がりを一口のんで一息つくとお義父さまが「奈緒ちゃんが食べてる姿をみてるだけで癒されるね」

「え、すみません、美味しくてうるさかったですよね」

「いいえ、美味しそうに食べてもらえると、握るわたしも楽しくなります」
「なにより、今日はお会いできて光栄です」

「え?」

「社長が息子さんが可愛いくて料理上手な奥さんをもらったと言って自慢をするから、、一度連れてきてくれと言ったんだよ」

「そんな、滅相もない」

「いやいや、本当に息子にもったいないお嫁さんだよ」

お義父さんが私の話題をしていることに、ちょっぴり嬉しくなった。

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