たぶんもう愛せない
<準備をする>
不明薬品の特定をしてもらえる研究機関を見つけて見積もりを出してもらうと約18万円ということだった。
つくづく、お小遣いを貰えているのは助かった。
結婚式の日に回収したチャック付き袋とその後にキッチンのゴミ箱に入っていたチャック付き袋、ワインを染み込ませたスポンジを研究機関へ送った。
結果がわかるまで2週間〜3週間とのことだった。


二人はあれから会っている感じはない。
海は頑なにこっちの家での情事を断っているようで、慎重なようだ。


お義父さまとは食事の準備の時以外でも日曜日の午後に一緒にお茶をするようになった。
話題も豊富で話をしていると楽しい、人柄もいいしイケメンでいわゆるイケおじだと思うが、弥生はお義父さまのなにが不満なんだろう。
二人は絶妙な距離感を保つ仮面夫婦だ。


ランチも懐石ランチや豆腐専門店のランチなど独身だった頃、雑誌でしか見たことのないようなところに連れて行ってくれて、その話をすると海は決まって不機嫌になった。
「お義父さまと二人でランチに行ってきたら?」

「何で俺が?」

「だって、私がお義父さまを独り占めしているのがつまらないんでしょ、だったら二人で行ってきたらいいじゃない」

「いや、そういうことじゃないよ」
そして海は降参のポーズをとった。

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