たぶんもう愛せない
<小さな仕返し>
目が覚めると隣に海は居なかった。
まさか、泊まり?いくらなんでもそれはルール違反だ。
うんざりしながら着替えてリビングに行くとカーテンは締ったまま照明は煌々と付いてる中、スーツのままの海が長ソファに座って眠っていた。
目の前のテーブルの上には私がプレゼントしたボールペンが置かれている。

少しは申し訳ないという気持ちがあるのかしら。

「海」
体を揺らして名前を呼ぶと、体が一度ピクンと跳ねてから「なお」と言いながら目を開けた。

やよいって言ったら蹴り倒していたかもしれない。

「こんな所で寝ていたら風邪をひくよ、昨日は飲みすぎたの?」

「いや、ああ・・・昨日はすまなかった」

悪さをして叱られている大型犬のようだ。

「どうしたの?お仕事なんですもの仕方がないじゃないですか」

「ああ、でも」

「とりあえず、着替えて。朝食は食べられる?」

「ああ、食べるよ。それからプレゼントありがとう」

「会社ででも使って」

「大切に使うよ」

海はボールペンを持って立ち上がるとベッドルームへ歩いて行った。

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