たぶんもう愛せない
シャケの切り身をグリルに入れ火を付ける。
玉ねぎと溶き卵の味噌汁を作りながら、昨日漬けておいたきゅうりの浅漬けを盛り付ける。
ハンバーグや唐揚げで山盛りになっている三角コーナーを片付ける。
部屋着に着替えた海がダイニングに入ってきた所でシャケが焼き上がりテーブルに並べる。
海はチラリと三角コーナーを見て視線をもどした。

「昨夜はリクエストまでしていたのに、料理を無駄にしてすまなかった」

「お仕事なんだから気にしてないわ、弥生さんもいないし、それに主役はいないけどお義父さまと二人でお祝いしたから」

「え、親父と?」

「そう、弥生さんとの馴れ初めも聞いたの」

「へえ〜」

「ハンバーグねすごく褒めてもらったの、懐かしいって」

「そうか、所で昨日の埋め合わせと言ってはなんだけど、今日どこかに出かけないか?」

「今日?」

「そう、食べ終わったら」

「前に、運動を始めるって言ったでしょ?それで、駅前の屋内テニス場のテニススクールの体験入校を申し込んでいてそれが今日なの。この後、すぐに出かけるの」

「ああ、そんなことを言っていたね。じゃあ、俺も行ってみようかな」

「海は遅くまでお仕事していたんだから、今日はゆっくりしたら?お昼までには帰って来れると思う」

明らかなつくり笑いの海が「わかった行っておいで」と言った。
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