たぶんもう愛せない
鍵を開けた所に海が慌てて出てきた。
一瞬、弥生が来ていて慌てているのかと思ったが
「奈緒、返事がなくて心配した」
と焦った口調で言っているので、少しは心配したのかもしれない。
まぁ、この男は子供をもうけることが目標だから、私に逃げられるのは困るだろうから。

「ごめんなさい、話に夢中になってスマホを見てなかったの」

「いや、事故にでもあったんじゃないかと不安になっただけだから。楽しかった?」

「久しぶりのテニスで明日、筋肉痛になっていそうだけど楽しかった」

「そうか、それならよかった」

最初は緊張した表情の海だったのが、すこしづつ柔らかくなっていく。

「お昼はどうしたの?」

「ああ、食べてない。疲れてなければあのスーパーに行かないか?」

「いいけど、荷物を置いてくるね」

「あ、いや、休んでからでいいよ」

「休んだら動きたくなくなるから」
そう言って笑うと、海はホッとしたような表情になった。
もしかしたら、昨夜の事を気にしているんだろうか?
どうでもいいけど。

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