たぶんもう愛せない
「もしかして、期待した?」

海は嬉しそうとも、迷惑とも取れない複雑な表情をしていた。

「違うの?こどもが出来たらもっと嬉しそうな態度になるのかと思った」

「もう少し、新婚を楽しんでもいいかなって思っただけ、もちろん俺と奈緒の子供が出来て嬉しいに決まってる」

「そう」

弥生と海の考え方に温度差があるんだろうか?どちらにしても、海と私の子を弥生が欲しがっている事に変わりはないし、それに協力しているは他でもない海自身だ。

「生理不順で、ヘモグロビン濃度が下がってしまうことがあって鉄剤の処方を受けてるの」

「貧血ってこと?」

「うん」

「大丈夫なのか?」

「いつも貧血って訳じゃないから、大丈夫よ。それに分かってると思うけど、子供を授かる分には問題ないから」

「子供の事は今はいいとして、奈緒の体が心配なんだ」

「女性の約10%は鉄欠乏性貧血だったりするし、私は定期的に検査をしているから安心して」

「そういうものなんだ」

「そういうものなのよ」
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