たぶんもう愛せない
ベッドに入ると海が抱きしめてくる。
流石に、昨夜弥生を抱いた男に身を委ねるのは気持ち悪い。
逆ならまだ我慢できるけど。

「ごめん、ちょっと疲れちゃって」

海はそれでも抱きしめる腕の力を弱めることはない。

「大丈夫、これ以上はしないよ。ただ、抱きしめていたいんだ」

海は弥生のために早く子供が欲しいんじゃないの?
さっきの話がひっかかる。

「海は子供が欲しくないの?」

「そりゃ、奈緒の子供ならきっと可愛いし欲しいよ」

「でも、さっきはまだいらないみたいな感じだったから」

「うん、もう少し奈緒との生活を続けたいんだ」

「ふうん。お休み」

「お休み」


この日、永遠が生まれた日のことを思い出した。
立ち会い出産で、海はずっと手を握ってくれていた。
あの時の海は私のことも少しは好きでいてくれたんだろうか?
夜泣きやすぐに体調が変わる永遠に不安になったりしたが、スゴく幸せだった。


朝、目が覚めた時顔には泣いた跡がしっかりと残っていた。

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