たぶんもう愛せない
「この間の埋め合わせをさせてほしい、今日こそデートしよう」

「あっ、今日はエステの予定を入れているの。初めてだから時間がかかるかも」

海の表情が曇り、不機嫌になる。

「今まで、土日に予定を入れる事はなかったかよね?確かに、約束をしてリクエストまでして料理を作って貰ったのに無駄にさせたのは悪かったと思ってる。でも、料理は置いておいてくれれば温めて食べることは出来たし捨てる必要はなかったんじゃないのか」

「だから?何が言いたいの?金曜日の夜は海はお仕事だったんでしょ?接待なら食事も出るでしょうし食事を残しておけば無理して食べることになるだろうし、何より作りたてと温め直しだと味が変わってしまうから。私は美味しい状態で食べて欲しかっただけだけど?それに、土日の予定とか以前からエステもスポーツも話をしてるはずだし、いいと言ってくれたのは海でしょ?」
感情的にならず、淡々と話をする。

「だからって、あの日のあと2日連続で予定をいれるとかおかしいだろ」

海がここまで感情的になる姿は初めて見るが、ちっとも怖いと思わない。
笑顔で私を好きだと言いながら弥生を抱いている海の方がよほど恐怖を感じる。

「何かやましいことでもあるの?」

「え?」

イライラしていた海が今度は一瞬息が止まっているようだ。

「だって、エステもテニスも事前に申し込んでいたことで、その時は海に急用ができるなんて知らなかったのよ。どうしてそんなふうに言われないといけないの?だって、海だってお仕事なんだから仕方がないことだったんでしょ?」

「ごめん、そうだよね。行っておいで」

やましいことしてるから、疑わしく感じるのよ。だったら、誰にどんな接待をしていたのか言ってみなさいと言えたらスカッとするんだろうな〜と、思うと少し笑えてくる。

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