たぶんもう愛せない
見合いの後、海智は私を家まで送ってくれた、それは前回も同じ。
岸を忘れるために海との結婚を決めたが、優しくて紳士的な海智にどんどん惹かれ愛するようになった。

でも、その優しさの理由を知っている今は、どんなに優しくてもどんなに紳士的でも全てが白々しく感じる。

海智が自らハンドルを握る車内でお互いの呼び方を相談したが、前回はそんな話は出なかった。
きっと、私の言動が変わったことで少し変化しているようだ。

前回ではあの女は海智を“海くん”と呼んでいた。私は、大人な海智を尊敬もしていたから海智さんと呼んでいたが、あんな男の名前を呼ぶのはヘドが出そうだし、あの女よりも親しげな呼び方にしたくて“カイ”と呼ぶことにした。
海(かい)は私のことを前世と同じく“奈緒”と呼ぶことになった。


「急いで式場を探さないといけないな」

「お願いします」

「約3ヶ月、決めないといけないことがたくさんあると思うから時間がある時はなるべく会うようにしよう。結婚前から家に来てくれてもいいけどね」

「ご両親は?」

「同居になるけど、二世帯住宅でつながっているようでどちらも独立した造りだから、構える必要はないと思う。」

「そうですか、わかりました」
もちろん知ってる。逢瀬の為の巧妙な二世帯住宅。
私もあんなことになるまで気づいてなかった。

「でも、結婚式までは同居はしないという約束です」

「そうだったね」

少し語気が強かったのか、この後はお互い何も話すことなく家に着いた。

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