たぶんもう愛せない
テーブルにポパイエッグ、チーズとハムを挟んだホットサンド、オレンジジュースを並べていると海が起きてきた。

「そう言えば、テニスは基本が週2回で火曜日の午後と土曜日の午前中にしたの。何かあれば振替で他の日に変更もできるから」

「わかったよ、今度からは少しは俺からの連絡を気にしてくれると助かる」

「はい、気をつけます」

一瞬、私を心配しているのかと思ったけど、もしかすると私の帰る時間が気になるということなのかもしれない。


片付けをしていると海がスーツに着替えてきたがネクタイは青いバラではなかった。

「ネクタイどうしたの?」

「ああ、あれは・・・」
さすがに、アレをつけるという感覚は海にも無いようだ。

「誰かからのプレゼントでしょ?せっかくいただいたのに、箱に入ったまま置いてあったから」
放置という方がぴったりだけど

「取引先の・・・おばさんから貰ったんだけど、あまり好きな柄じゃないんだ」

「そうなのね、でも使わないのは勿体無いわよね、シルクだし。海がいらないなら貰ってもいい?」

「え?どうするの?」

「違うものに作り替えてもいい?」

「そういうことか、いいよ」

「ありがとう」

海は「それから」というと背広を開けて内ポケットを見せながら
「これありがとう、さすがビスコンティだね。書き味もいいよ。じゃあ行ってくる」

そう言って、出ていく背中を見ながら

ボールペンは内ポケットに入れて持ち歩く可能性があったんだ。
もっと、どうでもいいものにすればよかった。
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