たぶんもう愛せない
「綺麗なコースターだね」

グラタンと玉ねぎのスープ、にんじんやきゅうりのピクルスをならべ、最後にレモンとハーブの水をコースターの上に置いた。

「元はネクタイだったんです、でも青いバラが綺麗だったのでコースターにしたんです」

青いバラに反応したのか、リビングでテレビを見ていた弥生がダイニングに入ってきた。

コースターを見ると一瞬険しい顔をしたが、すぐにいつもの表情に戻る。

「せっかく取引先の女性から頂いたのにクローゼットの中に箱に入ったまま放置してあったので、コーディネイトして準備したら、この柄が好みじゃないっていうので、貰ったんです」

一瞬、お義父さまの顔が歪がむ。
「海智も結婚したんだからこういうプレゼントを女性から貰うのは好ましくないな、奈緒さんだって気分は良くないだろう」

「断れない時もあると思うので仕方がないです。それに、その・・・おばさんだと言っていたので」

そっと弥生を見ると綺麗にネイルアートが施された爪が手のひらに食いこんでいるのが見える。

「それにしたって、些細なことも醜聞になる。この件はわたしから海智に注意しておくよ」

「でも、こんな風に再利用できたので今回は大丈夫です。冷める前に召し上がってください」

「ありがとう、本当に奈緒さんはいいお嫁さんだ」

ニッコリと微笑んでから
「弥生さん、青いバラが綺麗ですよね。でも、ネクタイだとナンバーワンホストみたいになっちゃうけど、コースターなら洒落てませんか?」

「そうね、奈緒さん裁縫もできるのね」

「はい、遊び程度ですけど。それでは」

弥生は悔しさが滲み出ているが、お義父さまの手前かなり我慢しているのがわかる。


今夜は、海のスマホはLINEの嵐になりそう。

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