たぶんもう愛せない
<準備>
ツナと千切りキャベツを挟んだイングリッシュマフィンと野菜サラダにゆで卵、そしてトマトジュースはあのコースターの上にのせた。


昨夜、海がベッドに入ったのはかなり遅い時間だった。
きっと弥生とのやりとりがヒートアップしたんだろう、なんて言って宥めたんだろう。
あの雰囲気だと、そうとう弥生は荒れたんじゃないかしら。

ふふっ

「おはよう、なんだか楽しそうだね」

「おはよう海、この間のネクタイだけどコースターにしたの」

「へぇ〜、綺麗に出来てるね」

ふふふふ、昨夜散々、弥生に言われたくせに。

「それで、昨夜お義父さまのたちの食事の時に使ったんだけど、お義父さまにこのネクタイの事を聞かれて取引先の女性から頂いたことを伝えたらお義父さまが」

「親父が?」

「既婚者が女性からネクタイを頂くなんてっておっしゃっていて。もしかしたら、お義父さまから何か言われるかも知れないです。迂闊なことをしてしまってごめんなさい」

下を向いて、申し訳なさそうなポーズをとってみる。もちろん、申し訳ないなんて1mmも思わないけど。

「いや、俺もきちんと断るべきだった。奈緒にも嫌な思いをさせてごめん」

「私はちっとも嫌な気分にはなってないわよ。むしろ、こんな綺麗なコースターができたから。いろんな飲み物の下に敷きましょう」

「そう言ってもらえてよかったよ」

「早く食べましょう」

海は椅子に座ってトマトジュースを飲みながらコースターを見つめていた。

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