たぶんもう愛せない
「海」

「海起きて」

ソファの上で完全に眠りに落ちている海の体を数回揺すってみる。
全く起きる気配がない。

すごい効き目、こんなものを飲まされていたんだ。
弥生のベッドルームのカメラに接続するとペットボトルの水や何かのボトルをサイドテーブルに置いている弥生は黒い総レースのベビードール姿だ。
用意周到で後は海が部屋に入っていけば開始できる手筈ということだろうか。

「でも、残念ながら海はここでぐっすり眠ってるわ」

海のズボンを下ろすが、眠っていて意識のない男性、まして海は身長も180cm以上ある為脱がすのは至難の技だし、何より起きないかハラハラしながらの作業はかなり心臓に負担がかかっているような気がする。

画面を見ると、弥生が落ち着かない様子で部屋の中を行ったり来たりしている。
少しするとベッドに座ってスマホを操作し始めたと同時に海のスマホに通知が入ってくる。

数件の通知が入った後、暫くしてから指紋を使ってロックを解除すると、既読をつけないために通知センター画面を表示した。
そこには弥生からのメッセージが並んでいた。

「薬はのませた?」
「まだ寝ないの?」
「何してるの」
「早く来て」
「遅い」
「我慢できない」

ほんと、気持ち悪い。
画面の写真を撮っていると

「焦らすなら、突撃するから」

隠しカメラ画面にもどすと、爪を噛みながらイライラしているのが見える。

「海の事を待ってるわよ」
規則的な寝息を立てる海に話しかけながらシャツのボタンを外し、前をはだけさせパンツも脱がせてから自分も服を脱いでいく。

もう一度画面を見ると弥生はガウンを羽織っているところだった。

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